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丸暗記やゴロ合わせがダメな理由

【結論】

丸暗記やゴロあわせ(語呂合わせ)がダメなのは,われわれの記憶のメカニズムに反するからです。

【理由】

(1)

記憶術や暗記法の本は,古くはギリシャ時代からあったそうです。
それほど昔から,人間は自分の「記憶力の無さ」に悩んでいたんでしょうね。

「もっと記憶力を高めたい」と思うのは私も同じです。
しかし方法を誤ると,逆効果になるので注意したいものです。

巷(ちまた)にあふれている根拠の薄い記憶術ではなく,もっと科学的な検証が必要です。

(2)

私は早くも30代で,「最近物覚えが悪くなって…」なんて周囲にグチをこぼしてました。

その他にも法律に関するグチを良くこぼしてたので,「愚痴のオグチ君」と呼ばれているくらいでした(笑)。

当時は,「脳の働きが頂点に達するのは17歳であり,その後は徐々に低下の一途をたどる」というのが,常識だったように思います。

このような常識に支配され,それによって「マイナス方向の自己暗示」をかけられてしまった結果が,「最近物覚えが悪くなって…」というグチになったんでしょう。 

しかし某大手予備校の非常勤講師になって4年目くらいに,「どうも記憶力と年齢には因果関係が無いんじゃないか」と思うようになりました。

当時すでに独立を考えていたので,陰でせっせと「秘密ノート」なるものを作りマーケティングに励んでいました。

1,000人前後の受講者の細かいデータから分かったのが,「記憶と年齢に因果関係なし」ということでした。

現在の宅建倶楽部の受講者にも同じことが言えます。

もっとも以上の分析だけでは推測の域を出ないですが,脳を研究している学者が発する最近の科学的検証によっても同じことが言えるようです。

(3)

脳を研究している学者に言わせると,記憶には,
あ 脳細胞の数
い 神経回路(シナプス)の数

の2つが関係します(反対説は無いと思います)。 

そのうち,の脳細胞の数は,年齢を重ねるに従って徐々に減っていくそうです。
しかし,の神経回路の数は,年齢を重ねるに従って逆に増えていく,というのが最近の研究結果です。 

年齢を重ねると,倉庫(脳細胞)に取りに行く道路(神経回路)が増えるので,宅建試験にはむしろ有利です。

なぜなら,宅建試験は横断的理解(横のつながり)が要求される試験だからです。
こういう試験では,倉庫の数ばかり多くても余り役に立ちません。
倉庫に取りに行く道路が多いほうが荷物(正解)を取りに行きやすいということです。

(4)

「年齢を重ねると,宅建試験にはむしろ有利」と言われても,「最近物覚えが悪くなって…」というグチが先行しちゃう人が多いかも知れませんね。

この嘆きは,私にも良く分かりますよ。
前に書いたように,私は早くも30代で,同じようなグチをこぼしてましたから…。

しかし考えてみると,
われわれは中学・高校時代の若い時でさえ,一つの物事を習得するのに「かなりの努力」をしたではないですか!

勉強が出来た人は,毎日コツコツ努力してましたよね。
落ちこぼれだった私でも,「赤点を取ったら大変」と,徹夜勉強した経験が二回や三回じゃないです。

勉強が生活の大半を占めてた学生時代でさえ,「かなりの努力」をして一つの物事を習得していました。

したがって,「最近物覚えが悪くなって…」と思う人は,学生時代のこの経験を忘れているだけなんだと思いますよ。

「最近物忘れがヒドイ…」って言う人もいますが,こういう人は,ほとんどの場合,「忘れてしまって思い出せない」のとは違います。
最初から覚えていないだけです。

「覚えたつもりになっているだけ」かも知れないと,一度検証してみることです。

私は,以上のような悪癖を「大人の甘え!」と受講者の方には言ってます。

(5)

人間の長期記憶(短期間では消えない記憶)には,
イ 手続記憶
ロ 意味記憶
ハ エピソード記憶

があります。

の手続記憶とは,物事の手順に関する記憶。
典型は,「箸(はし)の上げ下ろし」「洋服の着脱」などです。「自転車に乗れる」なんていうのも手続記憶です。
これらは,我々が赤ん坊の時から徐々に築き上げられてきた記憶で,意識しないでも覚えてる無意識の世界です。
人間にとって一番原始的な記憶ですね。

の意味記憶とは,経験とは関係ない単なる記憶。
「九九の計算」が典型です。9×8=72(くはしちじゅうに)なんていうアレです。
「いい国に作ろう鎌倉幕府」(1192年鎌倉幕府成立)なんていうゴロあわせ(語呂合わせ)も,この類です。
余り高度な記憶とは言えません。

のエピソード記憶とは,経験に基づく論理だった記憶。
われわれの脳に「物語」としてインプットされている記憶です。
「中学校の時,好きだったあの人に,ああいう風に振られた」なんていう失恋記憶が典型ですかね。
「思い出」は,みんなエピソード記憶です。
これは一番高度な記憶です。

ところで,
の手続記憶が最も発達するのは,小学校入学前です。
の意味記憶は,小学校時代に一番発達します。
だから「九九の計算」は10歳までに教えることになってるんです。

誰でも高校年代になると,の意味記憶に代わって,のエピソード記憶の方が発達し出します。

あとは年齢を重ねるにしたがって,意味記憶は次第に薄れエピソード記憶の世界になる,というのが脳を研究している学者が言っていることです。

だとすると,
意味記憶の発達が高かった若い頃のように,内容を丸暗記して試験に臨むという無謀な作戦が,だんだん通用しなくなるのは当然ですかね。
ここを見落とすと調子悪くなります!
「もう若いころのように覚えられない」,というグチばかりが先行することになっちゃいます。

宅建試験は,横断的理解(横のつながり)を要求される試験なので,「意味記憶に別れを告げエピソード記憶と仲良くする」という勉強法が,より強く求められます。

エピソード記憶は,経験に基づく論理だった記憶です。
つまり,単なるゴロあわせ(語呂合わせ)や丸暗記(意味記憶)をしようとは考えないで,「理解すること」「物語を作る」ような勉強をしてください,ということです。

「AがBに不動産を売却した」なんていう民法の問題一つを勉強するにも,自分がAあるいはBになったつもりで「物語を作り」「理解すること」を,いつも念頭に置いてください!

このような論理だった記憶方法は,宅建試験を超えて有用です。

なぜなら,丸暗記は覚えた範囲でしか役立ちませんが,理論や理屈を覚えると,それが根底となっている「すべての現象に応用できる」からです。

こういう勉強法が身につくと,他の世界でも「応用が利く人」になれます。

応用が利けば,そうでない人より 「楽して人生を送れる」かも知れません。
これが,私が考える本当の「らくらく宅建」です(笑)。

私がこのコラムを書くに際して特に参考にしたのは,「記憶力を強くする」(「池谷裕二」著,講談社)という,脳を研究している新進気鋭の学者の本です。




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