1. 宅建倶楽部

  2. 宅建講師のメッセージ・トップ

  3. その他

権力は正義と合体しているか?


『自分の私生活は公開しないくせに、受講者の私生活を知りたがる講師ばかり…怒…、そこで迷物講師は不平等な関係を改める為に、自分の私生活を積極的に公開しま~す…ハイ!…』



2010年(平成22年)に、書き始めたメッセージです。

(1)

わが国だけで300万人以上の死者を出した太平洋戦争に突入した頃、日本人の大多数が「権力は正義と合体している」と考えていました。

太平洋戦争に突入した頃、軍部をはじめとする時の権力者は「天皇陛下の命令に従う事は『正義』である!」と、大多数の国民を洗脳しました。
権力と正義の合体を見事に演出してみせたわけです。

(2)

でも太平洋戦争に負けて日本国憲法が施行されると、民主主義教育が行き渡りました。

高校生ともなると、中国の儒教思想まで教えられ、儒教では「権力は正義と合体している」とする考え方は存在しなかったと習いました。
逆に儒教では、「権力は正義と合体していない」とする考え方が中心で、そういう考え方を徳治主義と言うと習いました。だから中国では、君主には徳がなければならず、徳のない暴君は討伐しても良かったのです。

大学生になると、私の場合は多元的国家論なんていうのを習いました。
これは「権力は正義と合体していない」とする考え方を大前提にした政治学の思想で、現在の欧米では主流になっています。

(3)

じゃ、皆さんに質問します。
A説とB説、どちらの立場ですか?

A説「権力は正義と合体している」
B説「権力は正義と合体していない」


上の(2)で書いた民主主義教育や、悪事を働く政治家や公務員が依然として目立つ現状から、「権力は正義と合体していない」とするB説を支持する皆さんが多いのではないでしょうか?

でも私は、B説を支持する皆さんの多くは、隠れA説のような気がしてなりません。

つまり、表面的には「権力は正義と合体していない」としながら、心の奥では「権力は正義と合体している」と思っている(あるいは思わされている)のではないか、という危惧です。

(4)

私が隠れA説の皆さんが多いと危惧する理由は、ひと言で表現すれば「社会の複雑化」です。

そもそも権力とは、人間の行動を支配するチカラを指します。

わが国における最高権力者は、言うまでもなくお上ですが、複雑化した現代社会では、お上以外にもいろいろな権力者がいて、私たちはそれらに全部影響されながら生活しています。

皆さんが勤めている会社、その会社の上司・経営者も、皆さんの行動を支配するチカラがある以上、権力者です。

同じ事は、宅建の塾・予備校・出版社・講師にだって言えます。
2024年度の合格に向けた皆さんの学習を支配するチカラがあるので、微力ながらも権力者です。この私でさえ…。

(5)

いろいろな権力者の顔色をうかがいながら生活しなければならないので、まず、誰がより多くの権力を握っているかを瞬間的に嗅ぎ分けないと調子悪いです。
次に、瞬間的に権力者を序列化しないと、うまく世渡りができません。

・ 今でも最高権力者はお上と言えるだろう
・ マスコミは最高権力者に近いだろう
・ 同じ社内でも、係長より部長の方が権力者だろう
・ 同じ業界でも、中小企業より大企業のほうが権力者だろう
・ 同じ学校でも、中小より大手のほうが権力者だろう


という具合にです。

(6)

このように、いろいろな権力者の顔色をうかがいながら生活し、権力者の序列化にまで進んでくると、多くの人は、

・より多くの権力を握っている者に従う
・より多くの権力を握っている者の言葉を信じる
・より多くの権力を握っている者に頼る

ようになります。

その結果どうなるか?

表面的には「権力は正義と合体していない」としながら、心の奥では「権力は正義と合体している」と思ってしまう(あるいは思わされてしまう)状況に追い込まれるのです。

例えば、最近の生活保護受給者の急増です。
「権力は正義と合体していない」という民主主義教育を受けた人でも、わずかに残された「権力=正義」という部分に頼らないと死んじゃうのです。より多くの権力を握っている者(つまりお上)に頼らないと飯さえ食えないのです。そういう人たちにとって、「権力は正義と合体していない」といくら唱えても空しく心に響くだけなのです。

過労死が社会問題になっているのも、根っ子は同じです。
権力者の序列化にまで進んでしまった社会では、身近な最高権力者、例えば部長は昔の天皇と同じです。だから表面的にはどうであれ、「部長の命令に従う事は『正義』である!」と思わされてしまいます。『正義』の反対は『悪』なので、権力者の意向に反する行動は『悪』です。『悪』の烙印を押されては、全人格を否定されたも同様です。そこで、運が悪ければ天皇陛下バンザイ!となってしまうのでしょう。

「非正規雇用を正社員にせよ!」との運動も、やっぱり根っ子は同じだと思います。
そこに見え隠れするのは、権力の序列化の容認です。同じ従業員でも、非正規雇用より正社員の方が権力者だろう、という発想です。

まあ、いろいろとゴチャゴチャ書いてますが、皆さんも、御自分の身の回りのトラブルを洗い出してみると、その根本は、案外「権力は正義と合体している」と思わされていることに起因してるかも知れません。

(7)

最後に、昔から思っている個人的な考えを…。

お上・マスコミ・部長・大企業・大手の学校なんかの権力者は、すべてが、「人間が持つべき最高価値」に奉仕するための手段として、それらの権力を行使しているに過ぎないと考えるべきです。

その最高価値とは、法律や政治の世界では「正義」と表現するしかないと思います。
正義以外でも、「真実」「美意識」と言われるものも、この最高価値に含まれるのではないかと、20代の頃から考えてる次第です。そうは言っても、「正義」「真実」「美意識」の意味を突っ込まれると、いまだにお手上げ状態なのですが…。

いずれにしても、私には今日触れた社会問題について解決の糸口さえ見つかりません。それなのにこんなメッセージを書いてしまったことは、宅建講師にしては出すぎたものと思ってます!(ペコリ)


2010年03月18日(木)記
2023年12月04日(月)追記



ページのTOPへ