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更新:平成25年2月4日(月)

「信義誠実の原則」と「権利濫用の禁止」 - その7

(1)オブザーバー(立会人)

オメデトウと私的自治の原則という記事で,
私的自治の原則からは,
① 所有権絶対の原則
② 契約自由の原則
③ 過失責任の原則
の三つが派生して(分かれて)くる。

さらに私的自治の原則のオブザーバー(立会人)として,
◆ 信義誠実の原則(民法1条2項)
◆ 権利濫用の禁止(民法1条3項)
が目を光らせている。
と書きました。

私は「オブザーバー」と表現しましたが,この点について民法学の重鎮は,信義誠実の原則や権利濫用の禁止は「やたら持ち出すものではない!」という意味で使っておられます。

他の民法の条文を適用すれば解決できるときは,それらの条文を適用すればよく,
・ 民法の条文が無いとき
・ 民法の条文をそのまま適用すると変な結果になってしまうとき
に伝家の宝刀ないし御本尊として,最後に持ち出すべきものが,信義誠実の原則や権利濫用の禁止だ,と重鎮はおっしゃっています。

民法の条文が無いとき,あるいは, 民法の条文をそのまま適用すると変な結果になってしまうときは,控えていたオブザーバー(伝家の宝刀ないし御本尊)が,「物事の道理に反し,世間が許さないことはダメだよ!」とか,「自分勝手はダメでしょ!」などと最後にアドバイスしてくれます。それが信義誠実の原則や権利濫用の禁止だと理解して下さい。


民法学の重鎮とは我妻栄先生(1897-1973)のことです。
安倍首相の祖父(母方)は岸信介元首相ですが,その岸さんとは旧制高校,東京帝大の同級生で首席を争った大秀才。最高裁判例の多くは,今でも我妻説の影響を強く受けていると思います。

(2)これでオシマイ

「信義誠実の原則」と「権利濫用の禁止」 というタイトルで書き出した記事は,【その7】になってしまいました。我ながらノメリ込み過ぎかなと思っています。

「やたら持ち出すものではない!」との我妻先生の御託宣にもかかわらず長々と書いてきたのは,宅建が法律の入門資格だからです。

民法に初めて触れたかたは,参考書や条文を丸暗記しようとする傾向が強いです。
「でもそれじゃ民法では合格点を取れないよ!」ということを何とか伝えたくて,私自身がノメリ込んでしまいました。

民法に限らずすべての法律は,「目的」と「手段の関係で出来ています
人間社会を扱うのが法律ですから,これは当然のことなのです。
私たちは「幸せになるという目的」のために,「仕事したり・結婚したりという手段」を使うわけですが,法律も同じです。

民法の目的は,初心者のかたにも分かるように言えば,私生活について自分勝手にならない限り自由」にすることです。
「自分勝手にならない限り自由」にするという目的のために,明治時代の議会(帝国議会)が民法という法律を制定した(作った)のです。

その手段,つまり「自分勝手にならない限り自由」にするための手段は,1044条もある民法の各条文です。

手段はまだあります。「民法の条文が無いとき」や「民法の条文をそのまま適用すると変な結果になってしまうとき」は,判例(最終的には最高裁判例)が,「自分勝手にならない限り自由」であることの手段の役目を果たします。
その際は,「物事の道理に反し,世間が許さないことはダメだよ!」とか,「自分勝手はダメでしょ!」などという考慮がされます。その考慮が,「信義誠実の原則や権利濫用の禁止だよ!」,と私は初心者の皆さまにお伝えしたいのです。

これをお伝えすれば,私の宅建講師としての民法講義の役割は半分くらい終わりです。
そこで,「信義誠実の原則や権利濫用の禁止」というタイトルでこのブログを書くのは,これでオシマイにします。


平成25年1月4日(金)記
平成25年2月4日(月)追記


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